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スタッフブログ

バンブーロッドの美学 職人の手仕事が宿す”温度”

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朝の川辺でバンブーロッドを組むとき、少し背筋が伸びます。

竹の節一つひとつが指先に伝える微かな温もり。

それは、職人さんが火を入れ、削り、磨き上げた手の痕跡なのです。

 

竹は生きものですから、同じものは二度と生まれません。

機械では決して出せない、わずかな「歪み」や「癖」が、

生きているようにしなやかに曲がり、

ゆっくりと力を溜めて、ラインを優しく遠くへ運んでくれるのです。

 

初めてバンブーロッドを振ったとき、僕は戸惑いました。

グラファイトのように鋭く飛ばすことはできません。

でも、竹が長い時間をかけて育んだ「溜め」と「戻り」が、

キャストに深いリズムを生むことを感じました。

 

今はグラファイト(カーボン)の時代です。

軽くて強く、誰が振っても遠くへ正確に飛ぶ。

性能だけで言えば、バンブーはもう「過去の素材」

と言われても仕方ないのかもしれません。

それでもバンブーロッドが消えないのは、

「釣りの目的」が人によって違うからかもしれません。

魚を早く釣ること、遠くへ飛ばすこと、数を伸ばすこと。

それももちろん楽しいけれど、僕は時々、もっとゆっくりとした時間が欲しくなるのです。

 

ロッドが大きく弧を描き、ラインがゆっくり伸びて、水面にフライがそっと落ちる。

グラファイト全盛の時代だからこそ、逆にバンブーの「遅さ」や「重さ」が贅沢に感じられるのかもしれません。

だからこそ、一投一投が丁寧になり、魚とゆっくり向き合える。

まるで、忙しい日常の中であえて手紙を書くような、

あえてレコードを聴くような、そんな静かな抵抗のようなもの。

 

そして何より、バンブーの美しさは年月とともに深まるところにあります。

最初は淡いクリーム色だった竹は、陽射しと水と手脂を受けて、少しずつ琥珀色へと変わっていきます。

ニスが薄く剥げ、節の周りに小さな傷が増えても、それが味わいになる。

人が年を重ねて穏やかになっていくように、ロッドも静かに色気を増していくのです。

 

メンテナンスもまた、深い楽しみです。

シーズンが終わると、ガイドの錆を丁寧に落とし、フェルールを磨き、

ワックスを塗布したり、「相棒」の体を労うように拭き上げます。

手入れを怠ればすぐに曲がってしまうし、

愛情を注げば百年以上生き続けるといわれています。

繊細さと強さを併せ持つところが、バンブーロッドの不思議な魅力です。

そこには、遠い山の竹と、職人さんの静かな息遣い、

「釣りとは何か」をもう一度考えさせてくれる温度が、確かに残っています。

その温もりが、きっとあなたのキャストにも優しさを添えてくれるでしょう。

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